前々回からのお約束です。医学部の学生が人体解剖実習で勉強しなければならないことをお話しします。もちろん第一は筋肉や血管や神経などの名前と場所を覚えることにあります。しかし、それに負けず劣らず大事なことがあります。それは変異を体験するということです。
人の体の中は、顔がみな違うように、人それぞれ異なっています。つまり、教科書に載っているものは、平均的で代表的な例が書いてあるだけで、誰しもが少しずつ異なった造りをしています。体の中の個性といってもいいでしょう。ある血管がなかったり、数が多かったり、ある内臓が本来あるべきところ(教科書に記載されている場所)になかったり、いろいろです。それでも、皆さん健康で普通の生活を送っておられる。変異は必ずしも、異常ではありません。
しかし、臨床医の方々にとって、体の中の構造が人によって異なるというのは、重要なことであろうと思われます。従って、人の体には変異があるということを、解剖実習でよく勉強していって欲しいと思っています。もし、変異、個性がなかったら、解剖実習は模型を使ったり、コンピューターの画像を使ったりすることで大方の目的を達成できるでしょう。
それだからこそ、個性があるからこそ生命は尊いのだということを身をもって経験していって欲しいものだと思います。
コメント