体の中の個性、変異について 2。
学生たちはテキストに解剖の手順が細かく書いてありますから、それに従って解剖を進めていきます。すると、テキスト通りではない、おかしな事例が発見されてくることがあります。
我々教員はそれに着目するわけです。まず、「こうこう、こういう興味深い変異が見つかった。」ということを学生全員に告げ、実習が終わった夏休みにこの変異をさらに解析する意思のある者を募ります。普通5人から10人ぐらいの学生が名乗りを上げます。それ以外に一年前や二年前に解剖実習を済ませた、解剖学に興味のある上級生たちがそれに加わります。人体を使った研究をする場合、通常、大学の倫理委員会の承認を得なければなりません。そこで教員は前もって、その委員会に諮り、御家族に御遺体を解剖実習とはまた別に、研究と教育のために使わせていただく旨の承諾を得ます。必要ならば生前かかっておられた病院からカルテを取り寄せたりもします。
まず、文献を調べ、今までに似たような変異が見いだされたことがあるか、どのように研究を進めていくかを検討し、計画を立てます。そして夏休みに入ると、それに基づいて一気に研究を実施します。解剖実習よりもより丁寧に、問題に則して解剖を進めます。例えば注目している変異に関連して神経や血管が通常と異なった走行をしていないかをみたり、変異を起こしている場所から組織をごく小さく採取し、顕微鏡標本を作製して、顕微鏡観察したりします。
このような過程を通し、学生たちは基本的な解剖学の実験手法や研究の仕方を学ぶこととなります。また、現象の発見、文献による解析、仮説の提唱、実験による解析、得られた結果の考察という、研究のダイナミズムを経験することとなります。あとは、研究の最後のステップ、発表と評価です。それについては次回。
次回(令和3年1月31日)は、バードウォッチング企画中。
どちらのテーマも来年は新たな趣向を取り入れようと準備を始めています。
皆さん、よかったらご参加ください。また、冬には野鳥観察(バードウォッチング)を企画しています。 こちらもよろしくお願いいたします。
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