最近、私が主催する瀬戸田理科クラブに係わるところで、植物に携わる機会が多くなってきました。内容は野に咲く花を巡って歩き、草花たちを同定するというものです。草むらを足下に気を付けながら歩いていると、今まで認知してこなかった小さな草花が私に語り掛けてきます。これこそ、それまで気が付かなかった、気にも留めなかった、野の草花という自然を知るようになるという、瀬戸田理科クラブの精神そのものではないかと思います。
私の研究経歴の最後は動物細胞に係わるものでしたが、思えば35年前、3年間ぐらい、植物研究に携わっていたことがあります。イヌサフランという植物から確立した培養細胞にコルヒチン、コルチコサイドという痛風の薬をつくらせるというテーマと、植物の芽の生長点に植物ホルモンによって誘導されるセルラーゼという酵素を分離精製するというテーマです。最終的には植物になじめず、動物研究に入っていきましたが、今この文章を書いていて、懐かしい思い出として蘇ってきました。
これまではもう、植物に携わることはないだろうと思っていましたが、今研究というのではなく、一歩引きさがった楽しみとして、新たに植物と付き合うことになりました。そういう立場、観点から植物を見ると、植物の世界が何とみずみずしく魅力に満ちたものであることでしょうか。35年前、どうしてこの魅力に気づかなかったのでしょうか。
ふと、私の研究遍歴を思い出す時、懐かしくもあり、後悔もありの思いが脳裏に浮かび上がってきます。
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