クリの木
皆さんは初夏のころクリの木が長さ20 cmぐらいの細長い花を咲かせるのをご存知だと思います。ではその細長い花がどうやってイガに包まれた丸いクリの実になるのでしょうか?
瀬戸田理科クラブの仲間であるK.A.さんの持ったこの素朴な疑問が、我々がクリの実の成長観察を始めるきっかけとなりました。答えは簡単、細長いのは雄花でその根元にイガに包まれた雌花が咲いていて、それがクリの実へと成長していくのでした。しかし我々はクリの実がどうやってできてくるのかを知るために、成長過程を観察し続けました。それは6月に始まり、10月までの4か月にわたるもので、最初直径1.2 cmのイガが5.4 cmになって割れて落果するまで続きました。
その過程でいろいろな変化がクリの実にはありました。最初イガは緑色をしていてトゲもフニャフニャですが、観察2か月目の8月ごろ硬くなっていき、触ると痛くなります。鬼皮と呼ばれるイガの中の茶色いクリの実の皮は最初から茶色いわけではなく、はじめは白い色をしており、茶色くなるのは9月になってからです。デンプンが紫色に染まるヨウ素デンプン反応でクリの実を調べたところ、デンプンができ始めるのは8月も後半になってからである、ということもわかりました。また、イガの中には必ず3個の実が入っていることを見ました。クリの実の尖った部分にはいわゆるめしべがついており、それが伸びてイガの外へつながり花粉が付く柱頭を形成することがわかりました。これらのことは我々にとって初めて知ることばかりで、いずれも興味深いものでした。
クリの実は渋皮に包まれ、その上を鬼皮に包まれています。実は我々が食べる部分は種の中身にあたり、渋皮がその皮(種皮)、鬼皮は果肉に当たります。つまり我々は種の中のデンプンを食していることになります。
今回の観察でクリの実がいかにして作られていくかを見ることができましたが、研究では時間をおって変化をひとつひとつ観察していくことがいかに重要であるかを強く指し示すものとなりました。
最後にK.A.さんが語った言葉でしめたいと思います。
「疑問に思ったことが形になっていくことは面白い。」
これこそが科学の本質であると思います。
*この観察記録は1月10日から24日まで瀬戸田図書館にて展示されます。
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